秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
 昼過ぎになって、やっと大雅から電話が入った。

『千香、さっきはごめん』

 ずいぶんと疲れた声をしているが、とりあえず彼の周囲は落ち着いたようだ。

「大雅……梨香と一緒にいたんでしょ?」

 ズキズキと痛む胸を抑えて、なんとか声を絞り出す。

『誤解なんだ』

 すぐさまそう返されたが、浮気を弁明する常套句のようなセリフに少しも安心できない。
 大雅を信じたい気持ちは本当なのに、臆病な私は自分が傷付けられるのが怖くて、彼がなにかを言うより先に心無い言葉を口走ってしまう。

「梨香と私は同じ顔なんだし、本当は、梨香でもよかったんじゃないの?」

 そして、その直後に後悔する。

「ごめん」

『千香、頼むから俺を信じて。千香の姉との間に、やましいことはなにもない。帰宅したら、きちんと話がしたい。ただ、陽太に聞かせたくないから俺の実家に預けてもいい?』

 これ以上電話で話しても、彼を責める言葉ばかり言ってしまいそうだ。当然、陽太にそんな姿を見せたくない。

 彼の実家は何回か訪問しており、すっかり打ち解けている。だから、短い時間なら陽太を預けても大丈夫だろう。

「お義母さんの都合を聞かないと」

『さっき、俺の方からお願いしておいたから大丈夫だよ。それじゃあ、帰宅したら陽太を預けて……』

「私が預けてくるわ」

 気まずい雰囲気の中、三人で彼の実家へ行くのはいたたまれない。時間短縮のためにも、自分が言ってくると申し出た。

『そうか。じゃあ、申し訳ないけどお願いするね。一時間ぐらいで帰れるかな』

 すでに東京駅に着いていると聞いて、通話を切ると慌てて外出の準備をした。
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