秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
「お父さん、姉さんが大雅にしたことを全部聞いたわ」

 前のめりになりながらそう切り出すと、父はすっと目を細めた。

「千香。久しぶりに帰ってきた第一声がそれとは、ずいぶんな態度だな」

 私の中に、帰ってきたという感覚はない。ここへ来るのは今回が最後で、もう戻るつもりはいっさいない。

 そんな思いはひとまず隠して、それよりも梨香が大雅にしたことに対する謝罪を父親としてしてほしくて言い募る。

「なに言ってるの。まずはお父さんが大雅に謝るべきでしょ」

「千香、落ち着いて」

 大雅に制されて渋々後ろに身を引いたが、気持ちのうえで引き下がるつもりはない。

「佐々木さん、お久しぶりです」

 改めて、大雅が父に声をかける。
 私の前では見せないような若干鋭い視線をした大雅に、今彼は弁護士としてここにいるのかもしれないと感じる。

「ああ。先日は梨香が迷惑をかけたね」

 やはりこの人の言葉には、少しも気持ちがこもっていない。今の発言だけで、謝罪をした気になっているのだろう。

「前回、二度と起こさないように、娘さんをしっかり見張っておくと約束したはずですが?」

「そう固いこと言わんでくれよ。君はもう家族じゃないか」

 たしかに、私と結婚した以上は家族だと言われても間違いではない。
 でもそれは戸籍上の話にすぎない。そもそも今日は、その縁を切りに来たのだ。
< 148 / 168 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop