秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
「千香も、いい加減に大雅君を解放してあげなさい」

 目の前にいる父が、私の知らないまったく別人のように思えてならない。
 いかに理不尽でおかしな発言をしているのかという自覚が、まったくないように見受けられる。

 この人にとって私は、どこまでもどうでもいい存在だということなのだろうか。私は、ただ自分の従順に従う便利な駒でしかないと、今でも考えているのかもしれない。

 ぐっと握りしめた手に、隣に座る大雅の手が重ねられた。

「どうしたらそんな話になるのか、私にはさっぱりわかりませんね。千香と佐々木梨香はまったくの別人ですよ。私が愛しているのは千香だけです。佐々木梨香と結婚するつもりは毛頭ありません」

 大雅にきっぱり言い切られて、父が目をすがめた。

「今日私たちがここまで来たのは、佐々木家との縁を切るためです。私だって法律家の端くれなので、血のつながった親子の縁はどうしたって切れないことぐらい承知しています。が、それでもこうして来たのは、それ相応の覚悟があってのことです」

 きっぱりと言い切る大雅に、父はおもしろくなさそうにフンと鼻で笑った。
 自分の発言や梨香の所業を棚に上げて、不遜な態度をとり続ける父に鋭い視線を向ける。

「千香も、いい加減拗ねてないで帰って来なさい。梨香と大雅君が結婚したら、千香にはサポートに回ってもらうつもりだからな」

 大雅を攻略するよりも、私の方が手なずけやすいとでも思ったのだろうかと眉をひそめる。

 さすがにもう、我慢の限界だ。
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