秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています

　安定期に入る頃、夕飯に加奈子さんを招待して、妊娠している事実と未婚で母になることを告白した。

「まあ、そうだったのね」

　話した直後は驚いていた加奈子さんも、私の固い決意を悟るとすぐに表情をやわらげた。
　出産前後も、ここで乗り切るつもりだと話すと、加奈子さんが俄然やる気になる。

「そういうことなら、隣人として……ううん。友人？　違うわね。もうこの際、私を母親だと思ってどんどん頼ってちょうだい」

　心強い言葉に思わず涙が滲む。まったく血のつながりがないのに、身内の誰よりも私を気にかけてくれる。彼女との出会いには感謝しかない。

「ありがとう。加奈子さん」

　とはいえ、できる限り自力で乗り切ろうと思っていた。加奈子さんにだって彼女の暮らしがあるのだし、それを邪魔するわけにはいかないから。

　そんな私の考えをよそに、加奈子さんはそれまでより頻繁に声をかけてくれるようになっていく。

『千香ちゃん、多めに作ったからおかずを持って来たわ。食べられるかしら』
『体調はどう？　これ、いただき物なんだけあなたにもあげるわね』
『通院も、必要なら付き添うから声をかけてね』

　誰かに気にしてもらえる嬉しさに、胸が温かくなる。今の私には、加奈子さんの優しさが心に染みた。