秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
 片付けまで大雅がしてくれたのは大助かりだけど、これほど尽くされるとなんだか彼を都合よく使っているようで申し訳なくなってくる。
 それをそのまま伝えると、「それじゃあ、ご褒美に陽太と一緒にお風呂に入りたい」と申し出られてしまった。

 もしかして私から見たら手伝いだったとしても、大雅にとっては我が子との貴重な触れ合いの時間なのかもしれない。
 嬉々として触れ合う彼の姿を見ていたらそう気づいて、考えを改めてお願いすることにした。

 寝かしつけもふたりがかりだ。陽太の左側から私がポンポンと叩いている間、右側に横たわった大雅が頭をなでてやっている。
 いつもと違う状況に興奮した陽太は終始ご機嫌で、寝入るまでに時間がかかってしまったが、今晩ばかりは少しも苦痛に感じなかった。

 やっと陽太が寝付くと、寝室をそっと抜け出した。
 頑張ってくれた大雅を労おうと、ふたり分のコーヒーを淹れる。ダイニングテーブルで向かい合った昼間とは違い、今はソファーに横並びに腰を下ろしている。

「千香、俺の存在は迷惑になってない?」

 私を口説くと宣言をしたときのキラキラした表情は鳴りを潜め、不安げに尋ねる大雅に胸がきゅっと締めつけられる。
 私より年上で、海外でもバリバリ働いてきたような大雅がこんな自信なさそうになるなんて、そのギャップにときめいてしまう。

「迷惑だなんて、とんでもない。すごく助かってる。逆に、これまであなたが陽太と過ごす時間を奪っていたんだと、後悔しているぐらいで……」

 あの夜、なにも残さずに彼の元を立ち去ったことが返す返す悔やまれる。
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