秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
「そこはこれから鬱陶しがられるぐらい関わって、取り戻していくつもりだから。それよりも、ひとりでの子育ては不安だっただろ?」

「それは……うん。あっ、でもね……」

 大雅には、これ以上そんな申し訳なさそうな顔をしてほしくなくて、慌てて言葉を続ける。

「お隣さんが、すごくよくしてくれたの」

「それって、男?」

 一転して不穏な空気を醸す大雅に、慌ててそうじゃないと手を振った。

「ち、違うから。加奈子さんっていって、母親先代の人なの。お互い一人暮らしだからって、仲良くなって部屋を行き来するぐらいなのよ。出産するときも、加奈子さんが付き添ってくれて……」

「そうか」

 ほっとした様子の大雅に、私も安堵する。

「それじゃあ、一度挨拶に行かないと。俺の代わりに、千香を支えてくれたお礼をしたいし」

 数日とはいえ、他人の出入りのなかった我が家に突然異性がいれば、加奈子さんも心配するかもしれない。

「そうだね。私も大雅のことを話しておきたい」

「それなら、明日は手土産を買って挨拶に行こう」

 陽太が寝てしまえば、必然的に大雅とふたりきりの状況になる。プライベートな空間で長時間異性と過ごすなんて、大雅と過ごした夜以来だ。慣れない状況に緊張しそうだと、少し怖かった。
 でも、彼と話しているのは心地よくて、早々にずいぶんリラックスしていた。今日はお酒を口にしていないのに、まるで楽しかったあの夜のようだ。
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