秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
 私の緊張などとっくにばれているのか、くすりと笑いをこぼした大雅が一歩距離を詰めてくる。

「千香」

 横からふんわりと抱きしめられて、体が強張る。

「そんなに緊張しないで。俺は君たちと一緒にいられるだけでこのうえなく幸せなんだ」

 髪に口づけられるのを感じて、頬が熱くなる。
 恥ずかしさはあるけれど、彼にこうされるのはやっぱり嫌じゃなくて拒否はしない。

 わずかに力が抜けたのを感じ取ったのか、大雅は私の体を自分の方へ向けさせた。なにをするのかとそっと上目遣いにうかがい見た同時に、額に口づけられてドキリとする。

「これぐらいは、許してくれるかな」

 呆然としてうなずくしかできない私の髪をさらりとなでた大雅は、さらに髪にも口づけながら私の手を握る。
 手をつないだまま、一緒に寝室へ向かう。ベッドわきで再び「おやすみ」と額に口づけられて、思考はパンク寸前だ。
 
 久しぶりの甘い攻撃にたじたじになりながら、なんとか陽太の隣に潜り込む。高鳴っていた鼓動も、健やかな寝顔を見ていれば次第に落ち着きを取り戻せた。
 
 まるで示し合わせたかのように、間で眠る我が子に体を向ける。
 愛しそうに陽太を見つめた大雅は、起こさないようにそっと前髪を上げると、私にしたのと同じように「おやすみ」と額に口づけを落とした。

 この状況下で眠れるだろうかと心配だったが、突然の再会に気疲れしていたようだ。まるで吸い込まれるように、深い眠りについていた。
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