秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
「今日はこの後、お隣さんへの手土産を買いに行こうか」

 朝食を終えると、陽太をあやしつつ大雅の手を借りながら家事を済ませて、約束通り三人で出かける準備をした。
 てっきり電車かバスを使うと思って行き先を大雅に相談すると、「俺の話を忘れちゃった?」と、なぜか拗ねた口調になる。

「えっと……?」

「チャイルドシートをつけた車があるって、言ったよね?」

 そうだったと思い出し、行き先は彼にお任せした。

 近くの駐車場に止められていた大雅の車は、人気のSUV車だった。

「ファミリータイプのものに買い替えるつもりでいるんだけど、今はこれで我慢してね」

 たしかに、車高が高いこの車は子どもを乗せたり下ろしたりするのは不便かもしれないが、安い買い物じゃない。
 まさか車の買い替えまで検討しているとは知らず、唖然とした。
 

「た、大雅の趣味でいいと思うの」

 寝袋がどうとか言っていたし、多分彼はアウトドアをするのだろう。それなら、この車のままの方が大雅にとって都合がいいはず。

「うん。俺の趣味にも合う、ファミリーカーを探すよ」

 だめだ。真意がまったく伝わっていない。
 本人がそれでいいというのなら、これ以上なにも言うまいと早々にあきらめて、素早く車に乗り込んだ。
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