攫い



「冴贔屓(びいき)、おれも反対」




降ってきた声に目線を動かせば、ほんのり香る石けんのにおい。



3人トリオの最後のひとり。
優(すぐる)が、涼しげな顔で下敷きを手に持ち、私たちを見下ろしていた。




「あ!なんだよ優っ、邪魔すんな!」

「むり」




取り返そうと手を伸ばした冴をヒョイとかわし、下敷きをどこかに隠してしまう。




「ちょ、優、それ私の……」


「冴のことチョーシ乗らせたから、紅羽も少し反省ね。あとでふたりになったら返してあげる」




優はいたずらっぽく口の端を上げた。



余裕のある笑みになんだか負けた気分になってしまい、おとなしく唇を引き結ぶ。



そんな私を見た優は満足そうにうなずいて、子どもをあやすみたいにヨシヨシと頭を撫でてくる。
まったくもって嬉しくない。



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