攫い
.
「紅羽っ、どうしたのよその髪!」
「失恋でもしたの……?」
翌朝
教室に入るなり、叶恵(かなえ)と望結(みゆ)が目を丸くしてやってきた。
高く結んだポニーテールがトレードマークの、ハツラツとした性格な叶恵。
肩まである髪をゆるく巻いた、ふわふわ系の望結。
ふたりは女子の中では特に仲が良く、親友にあたる関係。
私は自分のボブヘアを触りながら、すこし恥ずかしい気持ちが湧いた。
「えーと……ちょっとね、最近暑いし?さっぱりさせたいなーって。に、似合ってないかな?」
「ううん!めっちゃ似合ってるわよ!短いのもアリ!」
「紅羽はしっかりした顔立ちだから、首元すっきりさせたほうがいいかもね」
ベタ褒めしてくれるふたり。
不本意なイメチェンにはなったものの、不格好でないのならそれでいい。
ほかの友達にも身を囲まれながらいろいろツッコまれたけど、事情が事情なのでやんわりと濁した。
失恋だったらいっそどれだけよかったか。
悲しいほどに私のボブカットは存外好評だった。
高校生になってここまで髪を短くしたことはなかった。
ロングヘアを下ろしているというイメージが定着してしたのだろう。
突然の変化に周囲からの視線がガラリと変わった。