攫い



複雑な褒め殺しからやっとのおもいで抜け出し、自分の席へたどりつく。




「紅羽ちゃん、おはよう」


「おはよう、鳴海くん」




隣の席の鳴海(なるみ)くん。
頬杖をつきながら、品のある笑みをたたえている。



艶のある栗色の髪。穏やかな容貌。
やわらかいのに瞳は理知的で、都とはまた違うしとやかさを漂わせている。




「もう言われ飽きたかもしれないけど、髪、かわいいね」


「何度言われても慣れません……でもありがとう」




鳴海くんは2年生の春にこの村へ引っ越してきた。



転校当初もちょうど私が隣の席で、光栄なことに彼の友達第一号となれたんだよね。



当初の鳴海くんはずいぶん口数が少なくて、雰囲気も冷たかったけど、いまとなってはこんなふうに親しみをこめて会話できるまでには仲を深めることができた。



分からない問題に悩んでたり、いきなり先生に指名されて焦ったときなんかは、隣からそっと助けてくれたりするとってもいい人。



鳴海様様な瞬間が多すぎて日頃から感謝いっぱいだ。




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