攫い



すると、鳴海くんがこちらをじっと見つめてきた。




「ん?どうしたの?」




首をかしげたときだった。
彼の長い指がおもむろに伸びてきて、私の髪を器用に耳にかけてしまう。



揺れも動きもしないふたつの瞳は、数ミリのブレも許さず、まるで焼きつけるように私だけを映しこんだ。




「鳴海、く……」

「横顔、見やすくなった」

「え……」




ふわりと、ほころぶようにほほえむ鳴海くん。




「いつも髪で隠れてたから、もったいないと思ってたんだ。でもこうして短くなって、耳にかけちゃえば、すぐに紅羽ちゃんの横顔が見られる」

「よ、横顔……?」




それはつまり、普段から見られていたというわけで……



恥ずかしくて顔が熱くなる。




「紅羽ちゃんはどこから見ても綺麗だけど、やっぱり横顔が一番綺麗だね。隣っていう特等席は、うなじとか、首すじとか、ぜんぶの輪郭が余すことなく味わえる角度なんだよ」


「わぁぁ、なになに、照れる。ありがとう、でもやっぱ照れる!」


「ふふ、あとで髪留めを贈るよ。僕だと思ってつけてくれたらうれしいな」


「わ、わかった。わかったので!ありがとう!」




意地が悪いくらい甘くささやいてくる。
むり、さすがに限界。



パタパタと手で顔をあおげば、背後からおもいきり髪をぐしゃぐしゃにされた。




「いらねーよ、髪留めなんて」





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