The holiday romance
義務<衝動
宿帳にシンの名前を書く時、少し迷ったが自分の旧姓とシンの名前は適当に新しいという漢字の新と書いた。

露天風呂が付いてる部屋になんて泊まったことのないシンはすごく驚いていた。

「部屋に露天風呂って!」

シンは子供みたいに喜んでいた。

「ユキさん、一緒に入ろう。」

シンがユキにキスしてきて服を脱がしにかかる。

「え?一緒にって…ちょっと待って。」

ユキはあっという間に裸にされて
シンと露天風呂に入った。

「マジでヤバい。最高!」

喜ぶシンを見てるとユキも嬉しくなった。

シンはユキを自分の膝の上に乗せて
背後から首筋にキスをした。

「今日一日中、こうしたいってずっと思ってた。」

こういう時のシンはすごくセクシーだとユキは思う。

シンはまた夜の顔になった。

男の人と一緒にお風呂に入るなんて
ユキは考えたこともなかったのに
シンはいとも簡単にその垣根を越えて来る。

「ユキさん…もっとこっち来て。」

シンの濡れた唇がユキに深いキスをする。

そしてユキの腰を引き寄せた。

「え?…ここで?」

「外みたいで開放的ですよね?
それに見られてるんじゃないかって錯覚が興奮するって言うか…」

シンはまたユキの想像を超えてくる。

「あり得ないよ。」

ユキが抵抗してシンから離れた。

「ユキさんて今までどんなHしてたの?
ベッド以外の場所の経験ないでしょ?
ずっと受け身だけでしょ?」

確かにそうだった。

義務みたいな愛のないsexしかして来なかったユキは自分から夫に触れたりも出来なかった。

されるがままにただ受け入れるだけだった。

「みんなこんなことしてるの?」

「してますよ。むしろユキさんが特殊です。
みんな色んな場所で色んなことしてます。」

「嘘ばっかり。」

「嘘じゃないです。

ね、だから経験だと思って
今日はユキさんがオレに触ってみて。
今から俺の言う通りにして。」

シンがユキの手を取って自分に触れさせていく。

ユキが触れるとシンは自分の声を抑えるために
ユキにキスをした。

「ヤバい…めっちゃ気持ちいい。」

シンが悦ぶと何故かユキも嬉しくる。

「ホント?」

「すっごい気持ちいい…ユキさんも気持ちよくしてあげるから来て。」

そしてまたシンと繋がる。
悪いことしてるみたいな背徳感がユキを高揚させた。

「ユキさん…好きだよ。」

シンがそう言ってユキの頬に触れた。

ユキはその言葉で現実に戻された。

「ダメ…好きにならないで。」

シンに抱かれながらユキはシンの気持ちも自分の気持ちも否定し続けた。

でも愛し合うほどシンに惹かれて行くのを感じて辛くなった。

そして二人は旅館での豪勢な食事を満喫して
もう一度露天風呂に入って
「明日はどこへ行こうか?」
と布団の中でシンの腕に抱かれながら話をして眠りについた。

朝もう一度二人で露天風呂に入って次の目的地に移動した。

そしてこの夜がシンとの最後の夜になった。

「実はトマムだけは2日前にね、宿を取ってあるの。
ここには絶対行きたくて初日に行こうと思ったんだけど…空いてなくて。」

「え?もしかしてトマムって雲海が見れるってトコ?」

「うん。そこのね、近くで今日の夜ならって
偶然、キャンセルが出て泊まれることになったのよ。」

「えー?マジで?最高ですね。」

「シンくん、キャンプってしたことある?」

「え?」

ここまで来るとシンもユキの言うことに慣れてきた。

「キャンプしたことないんですね?」

案の定ユキは頷いて
シンはやっぱりユキは只者じゃないと思った。

「キャンプしてみたいんですか?」

「うん。テントに寝るってテレビで観たけどすごくワクワクしたの。」

シンはつくづくユキは宇宙人だと思った。

わざわざテントなんかに寝なくてもと思うが
まぁそれはそれで楽しそうだなぁと思った。

星空の下でこの世間知らずの人妻と一夜を過ごすのも悪くないと思った。

「シンくんは何で北海道に行こうって決めたの?」

「うーん…とりあえず空港に行って、一番早く出る国内線に乗ろうって思って…
それがたまたま北海道の新千歳空港だったんで。」

「そっか。

なんか面白いね。シンくんて。

変わってるって言われない?」

「いやいや、それを言うならユキさんのが変わってますよ。
何者なんです?
ラブホもテントにも泊まったことなくて回転寿司も未経験て…俺の周りには居ないタイプだなって。」

自分のことを話す時のユキは正直辛そうに見えた。

「あ、すいません…こう言う話…」

するとユキは遮るように自分のことをこう言った。

「私はただの置き物。

そこに居れば良いだけの置き物。」

シンはそうでもないような気がしていた。
ユキは愛されてないかのように言ってるが
ユキの身体はちゃんといつそうなってもいいかのように手入れが行き届いてた。

「でも旦那さんとsexはしてたでしょ?」

「え?
そんなことわかるの?」

「まぁ…キチンと手入れされてる感じだし
見せない身体ならもうちょっと手を抜いてるかなって。

それになんていうか…すぐ濡れちゃう感じとか…あ、俺何言ってんだろ?」

「そっか。

でもね、私、夫とはシンくんとした時みたいに感じたこと無いの。

夫のsexは長く夫婦を続けるための義務みたいな感じだったから…。

月に一回だけ…それ以上は交わらない。
私は子供が欲しかったし、馬鹿みたいに主人もそうだと思ってたし…いつも同じ感じで…ただそれを受け入れるだけで…。」

あまりにユキが辛そうだったのでシンは話題を自分に変えた。

「え?それって俺だと感じるってこと?」

「うん…

自分じゃないみたいで…でもシンくんが言った通り、こっちが本当の私かも知れないね。

今まで私はあまりにもあの人のこと知らな過ぎたの。

あの人も本当は彼女を抱くときはきっとシンくんみたいに色んなところで色んなことしてあげるのかもね。」

その後、ユキはしばらく黙り込んでしまった。

シンはこれ以上は聞いてはいけない気がして
繋いだ手をギュッと握った。

「ユキさん、今日も思いっきり楽しく遊びましょうね。」

シンが笑顔でそう言うとユキの気持ちも少し楽になった。

「うん。今日もよろしくね。」

そして二人はまた別世界の次の扉を開けた。



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