裏切りの果てに~ただあなたと胸を焦がすような恋がしたかった~
その時、階段を軽い足取りで駆け上がってくる音が聞こえ、ビクッとした。


その音だけで自然に胸が高鳴る。


『ごめん、祥子ちゃん、お待たせ』


『いえいえ。先生、お疲れなのに階段、軽やかですね』


ちょっと笑いながら言った。


『そう?まだギリギリ20代だからね。体力には自信あるよ。それに…』


私を見つめるその目、お願い、もうこれ以上ドキドキさせないで…心臓がもたない。


『早く祥子ちゃんに会いたかったから』


『えっ?』


『僕は、2人きりで祥子ちゃんと話がしたかった。ずっとそう思ってたんだ』


寛也さん…?


私、寛也さんとは今日1日ずっと病院内で顔を合わせてた。


なのに「会いたかった」なんて。


その言葉の意味、すごく知りたいよ。


『あの、寛也先生?何か圭輔のことでありましたか?』


『…いや。あいつは関係ない』
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