天敵御曹司は政略妻を滾る本能で愛し貫く
 優弦さんの隣に座れるのは確実らしいので少しほっとしているけれど、普段顔を全く合わせない親戚の方たちと会うのは緊張する。
 優弦さんのお母様はいらっしゃるのかしら……。
 お義母様に会えることだけは、唯一楽しみかもしれない。
 この前はあまり話せなかったから、今度はぜひお義母様の昔の話を聞いてみたいと思った。
「世莉様、明日のお着物はご用意大丈夫ですか?」
「百合絵さん。ありがとう、もう決まってるから心配ないわ」
「そうですか。何か手伝うことがあったらおっしゃってください」
 玄関で突っ立っている私に、通りがかった百合絵さんが声をかけてくれた。
 彼女たちも明日のことでてんやわんやな様子で、新年早々一年で一番疲労する日だと吐露していた。
 かなり気疲れするであろうことを覚悟して、私はいつもより早めに寝付くために、いつも以上に仕事に集中した。

 翌日。宴会は昼から開かれることになった。
 優弦さんは少し仕事をしてからやって来るようで、私は百合絵さんたちの仕事を一緒に手伝っていた。
 襖を開けて二つの部屋を繋げた大広間は、そこそこの規模のライブ会場ほどの広さがある。
 派遣されたお手伝いさんが、部屋の形に沿って、ロの字に漆塗りのお膳をセッティングしていく。
 まるで時代劇で殿様が食事をするシーンのようだと感心しながら、私も配膳を一緒に手伝った。
 食事はさすが見事で、今運んでいる先付けは鮮やかなサーモンの小川巻きに、立派な数の子の西京漬け、ひらめの昆布じめなどで、手の込んでいる料理ということが一目で分かる。
 メインには伊勢海老やアワビをふんだんに使った料理が出るようで、今まで自分が経験してきた正月料理とは何もかも違いすぎて驚いた。
 優弦さんは子供の頃からこんなお正月を迎えていたのかと思うと、改めて世界の違う人なのだと実感する。
 と言っても、私は実家で過ごすアットホームなお正月が大好きだったけれど。
 なんて思っているうちに、続々と相良家の人々が集まりだした。
 平均年齢は四十代から五十代というところだろうか。小さな子供や、若い奥さんもちらほらいる。
 男性陣は皆貫禄があり、女性陣も華やかで堂々としていて、子供も賢そうな顔立ちだ。
 そういえば、相良家の男性は全員アルファ型の人間で、嫁いできた女性は全員オメガ型なんだっけ……。
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