天敵御曹司は政略妻を滾る本能で愛し貫く
井之頭さんはひとまず医務室に連れて行くようほかの女中たち全員に指示して、ガラスの破片を拾い集めた。
私もすぐにほうきを持ってきて、破片を一か所に集める。
「彼女たちの発言は、本当ですか」
二人きりになり、問い詰められる。眼鏡の奥で瞳がギラリと光り、私は思わず萎縮したけれど、決して負けまいと「いいえ」とはっきり答えた。
「でも、茶器を手放してしまったことには間違いないです。高価な備品ですから、今後取り扱いには十分注意します」
「百合絵さんの怪我より、茶器の心配を?」
「…………」
そう言われて、私は思わず押し黙った。
だってあれは、自ら付けた傷。しかも、擦り傷程度の浅いものだ。
私を陥れるために必要なアクションだったのだから、百合絵さんのことを心配するような理由は、正直どこにもない。
ここまでするほど……、彼女たちは相良家に心酔しているのか。
「井之頭さん。彼女たちは、身寄りのない女性だと聞きました。それは本当ですか?」
一度冷静になるために、私はそんな質問を投げかけた。
「はい。旦那様が、積極的にそのような方を採用し、仕事を与えています」
「では、この職場は彼女たちにとって、とても大事な場所なんですね?」
さらにそう詰め寄ると、井之頭さんは少し驚いたように目を見開いた。
「そうですね……。簡単に転職もできないかと」
「分かりました」
それだけ言うと、私はすっと立ち上がり、ちりとりの上に集めたガラス片を厚手のビニール袋に移してぎゅっと縛る。
全く反省の様子がない私を見て、井之頭さんは少しだけクールな顔を崩していた。
帰る場所がないのは私も同じなので、彼女たちの縄張り意識が強くなり、安定を守ろうとするのはよく分かる。
私はゴミを片付けると、ひとりで朝食の準備を始めた。
井之頭さんは、もうそれ以上何も聞いてこなかった。
女中の手が足りなかったため、そのまま配膳も行うことになった。
いつもは百合絵さんが運んでいるけれど、今日は私が優弦さんに食事を届けることに。
居間で待っている彼の元へ恐る恐る食事を運ぶ。
「どうぞ、お召し上がりください」
「……ああ」
この前、私の手当てをしてくれたときとは打って変わって、冷めた態度だ。
百合絵さんに色々と吹き込まれて、考えが変わったのだろう。
「では、失礼しました」
私もすぐにほうきを持ってきて、破片を一か所に集める。
「彼女たちの発言は、本当ですか」
二人きりになり、問い詰められる。眼鏡の奥で瞳がギラリと光り、私は思わず萎縮したけれど、決して負けまいと「いいえ」とはっきり答えた。
「でも、茶器を手放してしまったことには間違いないです。高価な備品ですから、今後取り扱いには十分注意します」
「百合絵さんの怪我より、茶器の心配を?」
「…………」
そう言われて、私は思わず押し黙った。
だってあれは、自ら付けた傷。しかも、擦り傷程度の浅いものだ。
私を陥れるために必要なアクションだったのだから、百合絵さんのことを心配するような理由は、正直どこにもない。
ここまでするほど……、彼女たちは相良家に心酔しているのか。
「井之頭さん。彼女たちは、身寄りのない女性だと聞きました。それは本当ですか?」
一度冷静になるために、私はそんな質問を投げかけた。
「はい。旦那様が、積極的にそのような方を採用し、仕事を与えています」
「では、この職場は彼女たちにとって、とても大事な場所なんですね?」
さらにそう詰め寄ると、井之頭さんは少し驚いたように目を見開いた。
「そうですね……。簡単に転職もできないかと」
「分かりました」
それだけ言うと、私はすっと立ち上がり、ちりとりの上に集めたガラス片を厚手のビニール袋に移してぎゅっと縛る。
全く反省の様子がない私を見て、井之頭さんは少しだけクールな顔を崩していた。
帰る場所がないのは私も同じなので、彼女たちの縄張り意識が強くなり、安定を守ろうとするのはよく分かる。
私はゴミを片付けると、ひとりで朝食の準備を始めた。
井之頭さんは、もうそれ以上何も聞いてこなかった。
女中の手が足りなかったため、そのまま配膳も行うことになった。
いつもは百合絵さんが運んでいるけれど、今日は私が優弦さんに食事を届けることに。
居間で待っている彼の元へ恐る恐る食事を運ぶ。
「どうぞ、お召し上がりください」
「……ああ」
この前、私の手当てをしてくれたときとは打って変わって、冷めた態度だ。
百合絵さんに色々と吹き込まれて、考えが変わったのだろう。
「では、失礼しました」