天敵御曹司は政略妻を滾る本能で愛し貫く
社会人になり一層、何人もの女性に言い寄られることがあったけれど、その好意のどれもが居心地が悪かった。
俺を求めているわけではなく、俺のスペックや相良家自体が欲しいように思えてしまい、誰も信じることができなかった。
一方で、医療の仕事は、最初は受け身だったけれど、人のために仕事をするということは、案外自分の性格に合っていると感じた。
何もない空っぽな自分だからこそ、目の前にいる人のために尽力することが、今まで全てのことに対して無関心に生きてきた罪滅ぼしのように思えたのだ。
自分が少しでも人の命を救うことに関われたかもしれない……。初めてそんな感情に包まれたときは、言いようのない達成感に包まれた。
俺は、医大生のとき以上に勉強に励み、ほとんど自由な時間などない日々を送った。
「優弦さん、これを見て」
そんなある日の夜のことだった。
夕食後、病弱でほとんど床にふせている母親が珍しく部屋から出てきて、一枚の写真を俺に見せてきた。
そこには、美しい水色の着物の横で、凛とした表情で立っている女性の写真があった。
「世莉さん。専門学校の着物デザインコンペで優勝したんですって」
「え……」
「郵送でわざわざ梅さんが送ってくださったの」
これが、あの暗い顔をしていた世莉さんなのか……?
あのときの自信のなさそうな世莉さんの面影は微塵もなく、自信を持って着物と向き合っている彼女の姿がそこにあった。
着物をモデルに着せてデザインを説明している様子の写真もあり、その表情はプロそのもので、活き活きとしている。
そうか、彼女は、自分の人生に必要なものを見つけられたんだな……。
そのことが、自分の中で信じられないほど大きな希望になった。
「綺麗な人ね……」
「そうですね」
母親の言葉に、自然と頷く。
「こっちに彼女が来たら、守ってあげるのよ。あなたが」
初めて母親に真剣な声で詰められて、俺は少し驚いた。
けれど、気づいたらすぐに「はい」と返していた。
世莉さんとは全く違う業種だけれど、自分と同じように定められた環境の中で、精一杯やりがいと向き合って模索している彼女の姿を見たら、急激に親近感が沸いて出てきた。
「彼女と結婚するのは、僕が三十五になったときだと言いましたね」
「そうね。外科専門医になって、一人前になったらと……寿さんは言ってるわね」
俺を求めているわけではなく、俺のスペックや相良家自体が欲しいように思えてしまい、誰も信じることができなかった。
一方で、医療の仕事は、最初は受け身だったけれど、人のために仕事をするということは、案外自分の性格に合っていると感じた。
何もない空っぽな自分だからこそ、目の前にいる人のために尽力することが、今まで全てのことに対して無関心に生きてきた罪滅ぼしのように思えたのだ。
自分が少しでも人の命を救うことに関われたかもしれない……。初めてそんな感情に包まれたときは、言いようのない達成感に包まれた。
俺は、医大生のとき以上に勉強に励み、ほとんど自由な時間などない日々を送った。
「優弦さん、これを見て」
そんなある日の夜のことだった。
夕食後、病弱でほとんど床にふせている母親が珍しく部屋から出てきて、一枚の写真を俺に見せてきた。
そこには、美しい水色の着物の横で、凛とした表情で立っている女性の写真があった。
「世莉さん。専門学校の着物デザインコンペで優勝したんですって」
「え……」
「郵送でわざわざ梅さんが送ってくださったの」
これが、あの暗い顔をしていた世莉さんなのか……?
あのときの自信のなさそうな世莉さんの面影は微塵もなく、自信を持って着物と向き合っている彼女の姿がそこにあった。
着物をモデルに着せてデザインを説明している様子の写真もあり、その表情はプロそのもので、活き活きとしている。
そうか、彼女は、自分の人生に必要なものを見つけられたんだな……。
そのことが、自分の中で信じられないほど大きな希望になった。
「綺麗な人ね……」
「そうですね」
母親の言葉に、自然と頷く。
「こっちに彼女が来たら、守ってあげるのよ。あなたが」
初めて母親に真剣な声で詰められて、俺は少し驚いた。
けれど、気づいたらすぐに「はい」と返していた。
世莉さんとは全く違う業種だけれど、自分と同じように定められた環境の中で、精一杯やりがいと向き合って模索している彼女の姿を見たら、急激に親近感が沸いて出てきた。
「彼女と結婚するのは、僕が三十五になったときだと言いましたね」
「そうね。外科専門医になって、一人前になったらと……寿さんは言ってるわね」