全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
「魁? どうしたの?」

「いや、スッピンの郁海も綺麗だなって。色気がありすぎ」

「なにそれ」


 逆にメイクを落とした私に幻滅していなくてよかった。
 そんな考えが頭に浮かびつつ、魁の隣に座って髪をタオルドライする。


「髪、俺が乾かしたい!」

「え?」

「彼女の髪を乾かすって、一回やってみたかったんだ」


 魁は洗面所にあるドライヤーを持ってきて、楽しそうに私の髪に風を当て始めた。

 こういうのもいいな、と素直に思う。
 恋人に世話を焼いてもらえるのがこんなに幸せなのだと、魁が教えてくれた。

 ドライヤーの電源をオフにしたあと、私の髪を梳く彼の手が自然と頬に添えられる。
 そのまま見つめ合うのと同時に、どちらからともなく唇を重ねた。


「郁海、好きだよ。大好きだ」

「んっ……魁……」

「絶対離さないから」

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