全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
 会社に行く前に一度自宅に戻って着替えたいという魁のために、早朝に起きてコーヒーを淹れた。
 もう始発も動いているだろう。


「よかったらこれ食べていく? フルーツサンド」

「郁海の手作り?」

「ううん。由華さんが作ったの」


 由華さんは以前からフルーツサンドにハマっているのだが、私に味見をしてほしいと言って、作ったものを食べさせてくれる機会が増えた。
 最近ではいろんなフルーツを取り入れていて、それがまためちゃくちゃおいしい。
 彼女の作るホイップクリームが上品で甘さ控えめだから、フルーツの味が引き立っている。


「うまいな!」


 もぐもぐとそれを頬張る魁がかわいくて、つい見惚れてしまった。


「なに?」

「ううん、なんでもない。魁が好きだな、って思って」

「俺のほうが何倍も惚れてる」


 唇の端に白いクリームを付けたまま、魁が私にキスをした。

 初めて一夜を共にしたあとのキスは、とても甘い味で。

 私はこの幸せな日を一生忘れないだろう。

< 119 / 149 >

この作品をシェア

pagetop