全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
「ねぇ、中二からはどうしてたの? ちゃんと塾に通ったんでしょ?」


 現在勤務している会社名を聞いただけで、それ以外についてはなにも話せていない。
 今日は私と音信が途切れていた学生時代のことや、大人になった魁の話をたくさん聞こう。


「郁海が勉強の面白さを教えてくれたから、あのあとぐんぐん成績が伸びたよ」

「そうなんだ」

「おかげで高校も大学も志望校に合格できた」


 運ばれてきたパスタを自分の皿に取り、くるくると巻きながら魁が照れたような笑みを浮かべた。

 
「がんばったんだね」

「郁海のおかげだよ」


 フフッと吹き出しつつ、私は小さく首を横に振る。
 私はなにもしていない。魁は元々頭が良く、飲み込みが早かったから。
 そして、志望校に入れたのは、彼の努力あってこそだ。

 出身校はどこなのか尋ねると、魁はサラリと一流大学の名前を口にしたので驚いた。
 私よりよほどいい大学を卒業しているではないか。
 そりゃ、大企業である宝生製薬に就職できるはずだ。

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