全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
 仕事を終える時間になり、帰り支度をして従業員通用口から外に出ると、魁が腕組みをした格好で立っていた。


「ごめん。今終わったの。待たせた?」

「いや。お疲れ様」


 不機嫌なままかもしれないと一瞬身構えた私に、魁は自然な感じで返事をした。
 彼の表情を見る限り上機嫌ではないものの、特に怒ってもいないようだ。


「じゃあ、行こう」

「……どこに?」

「どこって、俺の家。カーテンの色を選んでくれるんだろ?」


 その理由で私を待ち伏せしていたなんて、にわかには信じがたい。
 もしそうなら実際に足を運ばなくても、部屋の写真を撮って私に送るだとか、ほかにも方法はあるのに。


「郁海はさ、最近俺を避けてる?」

「さ、避けてないよ」

「だったら俺の家に来れるよな」


 半ば強引に首を縦に振らされた。
「郁海ともっと話したいんだ」と言われれば、断る理由も見つからなくて。

 近くのパーキングに停めてあった魁の車に乗せてもらい、彼の家に行くことにした。

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