全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
「今度は郁海の家でデートしよ」

「え?!」

「次は郁海が手料理作ってくれるんだろ? このビーフシチューの褒美として」


 そんな発言はしていないはずだけれど……。
 それに、ご褒美って自分から要求するものではないのに。


「もうひとつ褒美がほしい」

「貪欲! なに? 食べたいものをリクエストしたい、とか?」

「違う。今もらっとく」


 魁はおもむろに椅子から立ち上がり、私の隣に来て腰をかがめた。

 どうしたのかと思い、座ったまま私が視線を向けた途端、魁が顔を近づけてきて私の唇にチュッとキスを落とした。
 わざとらしくリップ音を立てた魁はしたり顔だ。


「ちょ、ちょっと!」

「もっと大人のキスがしたいけど、今日は我慢だな」


 わざわざ気づかされた。気づかなくても良かったのに。
 
 魁にキスをされても、まったく嫌じゃないことを ―――

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