離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 会社のビルというより、モダンな美術館のようだ。
 
 感心しながら受付で名乗ると、女性スタッフが「うかがっております」と上品に微笑み岩木さんを呼び出してくれた。
 
「あぁ、琴子さん。ありがとうございます」
 
 ソファに座って待っていると、岩木さんがエレベーターから降りてきた。
 
 その姿を見てほっと胸をなでおろす。
 
「こんなところまで来ていただいて、本当に申し訳ありません」
 
 深く頭を下げられ、恐縮しながら首を横に振る。
 
「いえ、ただスマホを持ってきただけなので、気になさらないでください。それに、本社ビルを見られてよかったです。とても大きくて綺麗なビルで驚きました」
「それはよかった。このビルは五年前に建て替えられたばかりなんですよ。国内外の美術館や劇場を手掛けた建築家の設計で」
「そうなんですね! どうりで素敵だと思いました」
「エントランスも自慢ですが、高層階からの眺めも素晴らしいんですよ。せっかくですからぜひどうぞ」
「え」
 
 当然のようにエレベーターのほうへ歩きだした岩木さんに戸惑う。
 
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