離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 忍さんの言葉に、内田部長と言われた男性は「わかってないねぇ、若造は」と鼻で笑う。
 
「いいか、忍くん。事業所数っていうわかりやすい伸びがあれば、投資家たちがよろこんで株に食いつく。株価が上がれば資金調達も容易になる。いいことだらけなんだよ」
 
 自分よりずっと年少の忍さんを見下した態度だった。
 
「これだから、コネで副社長になった御曹司は経営ってものをわかってない」
 
 見ている私でも不愉快になるくらい失礼な口調だった。
 
 けれど、忍さんは向けられた敵意に顔色ひとつ変えず、冷静に反論する。
 
「我が社の企業理念は、不動産事業を通して魅力ある街を作りその街自体の成長に貢献することです。基本を忘れて投資家や株主だけを見て経営の舵を切れば組織の崩壊につながるのでは?」
 
 内田部長は「ぐぅ」と言葉に詰まる。
 
「それに、短絡的なあなたの思い付きで騙されるほど、投資家たちはバカじゃないですよ」
 
 切り捨てるような冷たい声で言い微笑む。
 
 そのかっこよさに身震いした。
 
 そんな私を見て、隣にいた岩木さんがふふっと笑う。
 
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