離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
「どうですか? 仕事中の副社長はなかなか頼もしいでしょう」
 
 私は大きく首を縦に振ってうなずいた。
 
「本当に、頼もしくてかっこいいです」
「あ、そろそろ会議が終わりそうですね」
 
 岩木さんの言ったとおり、会議が終わりそれぞれが立ち上がるのが見えた。
 
 年配の役員たちから会議室を出ていく。

 忍さんは会議室に残り、息を吐いて髪をかき上げた。

 真剣だった表情をゆるめ、ひと息ついているのがわかる。
 
 彼は女性秘書が差し出したコーヒーを受け取り口に運んだ。
 
 そしておもむろに顔を上げる。
 
 あ、まずい。
 ここにいると忍さんに見つかってしまうのでは。
 
 焦って岩木さんのうしろに隠れようとしたけれど、すでに遅かった。
 
 ガラスの壁越しに忍さんと目が合う。
 
 その瞬間、彼の黒い瞳が驚きに見開かれた。
 
「な……っ!」
 
 そうつぶやいて、忍さんが手に持っていたコーヒーカップを落とした。
 
 黒い液体が床にこぼれ、カーペットにシミが広がっていく。
 
 近くにいた秘書が慌てているというのに、忍さんはこちらを見たまま凍りついていた。
 
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