離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 良家のお嬢様ばかりが通う名門校で、卒業後は付属の女子大に進学する生徒がほとんどだった。

 そんな中ひとみは「美容師になりたい!」と家族の反対を押し切り、突然学校をやめてしまった。

 そしてヘアサロンで見習いをしながら資格を取り、今では立派な美容師さんだ。

「だって人生は一度きりなんだから、好きに生きないともったいないじゃない」

 ひとみは当然のように言うけれど、それを行動にうつせる人は少ないと思う。

 彼女の行動力と勇気は本当にかっこいい。

「たしかに、私も一度でいいからひとみみたいに思いきって冒険してみたかったなぁ……」

 ひとり言のようにつぶやくと、ひとみがものすごい勢いで身を乗りだした。

「してみればいいじゃん!」
「え?」
「琴子も冒険しちゃおうよ!」
「ええ?」
「ほら、昔の映画であったでしょ。どこかの国の王女様が身分を隠して街に繰り出して、一日だけデートを楽しむみたいなやつ」

 そういえば、古い外国の映画でそんなお話があった気がする。

 白黒の映像だったはずなのに、デートを楽しむヒロインの笑顔がとてもかわいくて、キラキラと輝いて見えたのを思い出す。

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