離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
「素敵な男の人と手をつないで、おいしいものを食べて、ドライブをして。結婚前に一度でいいからそんなデートしてみたくない?」
「……うん、してみたい」

 熱い口調でたずねられ、私は自然とうなずいていた。
         

  

 
 五日後。

 私は緊張で汗ばむ手でスマホを握りしめ歩いていた。

 慣れない高いヒールのせいで躓きそうになる。

 はじめて履いた膝上丈のミニスカートもすそが気になって落ち着かない。

 でも私がこんなに緊張しているのは、服装のせいだけではなかった。

 その理由は、これからマッチングアプリで待ち合わせをした男の人とデートをするからだ。


 一度でいいから男の人とデートをしてみたい。
 恋愛のドキドキを味わってみたい。

 そう思ったものの、そんなことを頼める異性の知り合いがいないとひとみに言うと、彼女はマッチングアプリを教えてくれた。

 ひとみは何度もこのアプリを使っているそうだ。

 恋人を作るだけではなく、趣味の合う友達探しやカラオケや買い物に付き合ってほしいといった、カジュアルな目的で使えるアプリらしい。

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