離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 
 スーツ姿の忍さんを間近で見て、やっぱりかっこいいと実感してしまう。
 
 整った顔はもちろん、すらりとした首筋やたくましい肩。
 
 スーツの袖口からのぞく手首や無造作に投げ出した長い脚。
 
 ひとつひとつが男らしくて色っぽい。
 
 向かい合って座ってはいるけれど、彼は居心地悪そうに視線をさまよわせていた。
 
 私のほうを見ようとしない。

 やっぱり私はここに来るべきではなかったのかな。
 
 そう落ちこみかけたとき、忍さんが口を開いた。
 
「……あの部屋での暮らしに不便はないか」
 
 横を向いたままぽつりと言われ、最初はひとり言かと思った。
 
 一瞬ぽかんとしてから、私への質問だと気づき慌てて答える。
 
「いえ。すごく快適です。素敵なお部屋をありがとうございました」
「本当に?」
「はい。よく岩木さんが来てくれますし。今日もお茶を飲みながら話し相手をしてくれたんですよ」
 
 そう言ったとたん、忍さんの顔が不機嫌そうにゆがむ。
 
「あいつ、図々しく部屋に上がり込んでいるのか」
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