離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
「……まったく。副社長はどうでもいいことを気にするんですから」
 
 岩木さんは大きくため息をついてから、私に向かって話しかける。
 
「では琴子さん、エレベーター前の応接スペースへどうぞ。あちらの窓からの眺望は素晴らしいんですよ」
「あの、私はもう帰りますので」
「まぁまぁ、そう言わずに」
「でも、ご迷惑になりますし……」
「あぁ、もう。副社長がそんな仏頂面をしているから、琴子さんが怖がっているじゃないですか。黙ってないでなにか言ってくださいよ」
 
 岩木さんは帰ろうとする私を引き留めながら、忍さんを睨んだ。
 
「いえ、怖がっているわけじゃ」
 
 図々しく居座って、これ以上忍さんに嫌われたくないんです。
 
 そう思っていると、忍さんがおもむろに口を開いた。
 
「迷惑じゃない」
「え……?」
「岩木のスマホを届けてもらえて感謝してる。もし嫌じゃなければ、ゆっくりしていってほしい」
「……本当ですか?」
 
 おそるおそるたずねると、彼は「あぁ」とうなずく。
 
 拒絶されているわけじゃないと知って、ほっと胸をなでおろした。
 



 ふたりで応接スペースのソファに座る。
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