離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 一日だけデートをしてくれる相手がほしいという私の条件に合った男の人と、数回メッセージのやりとりをして会うことになった。


 相手はどんな人だろう。
 素敵な人だといいなぁ。

 なんて胸をはずませながら待ち合わせの場所へ向かう。


 アプリではニックネームを自由につけられるから、琴子という本名ではなく『愛』という名前で登録した。

 これは母が妊娠中、私につけたいと思っていた名前だそうだ。

 生前、母がこっそりと教えてくれた。
 結局私には祖父が考えた古風な名前をつけられたけれど。

 ちなみに今日の服装は全身ひとみから借りたもので、メイクもしっかり彼女がしてくれた。

 膝上のミニスカートと、体にぴったりフィットした丈の短めのカットソー。

 そして高いヒールにアイラインをはっきりと引いた濃いめのメイク。

 ひとみの部屋で着替えさせてもらい鏡を見た私は、驚きの声をもらした。


『すごい、別人……!』

 もともとおとなしい印象だった私が、服装とメイクのおかげで意志が強く派手めなギャルに見える。

『でしょう?』とひとみが胸を張る。

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