離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 その言葉に重みを感じる。
 
 アハメッドの暮らす国では、女性たちはいろいろな制限を受けている。
 
 今回、せっかく日本に来たのに商談や接待などの堅苦しい場面が続き、ナジャーとルルは自分を押し殺し自由に楽しめなかったんだろう。
 
 けれど、今日は料亭やレストランではなく自宅に招いたおかげで、ふたりにリラックスしてもらうことができたようだ。
 
『それにしても、完璧なもてなしに驚いた。まさか食事にここまで気を使ってもらえるなんて。私たちの文化をきちんと理解し尊重してくれているのが伝わってきた。星付きのレストランだってここまで対応してくれないよ』
 
 アハメッドは食事が並んだテーブルを見ながら言う。
 
『あの料理も琴子が?』
 
 彼の問いかけに『はい』とうなずく。
 
『本当に素晴らしいね。彼女は中東の文化に詳しいのかな』
 
 そう言われ、たしかにと不思議に思っていると、『お料理をお気に召していただけてよかったです』と声をかけられた。
 
 振り返ると、琴子が柔らかい笑みを浮かべ立っていた。
 
 アハメッドは『琴子!』と笑顔で彼女の名前を呼ぶ。
 
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