離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 驚きで言葉を失った。しばらくしてから震える息を吐き出す。
 
「勘弁してくれ……」
 
 思わずそんな本音がもれた。つぶやいた声は掠れていた。
 
 俺のことを好きでもないのに、そうやって尽くさないでくれ。
 
 そんな一生懸命な姿を知ったら、今以上に惹かれてしまう。
 
 彼女を苦しめないために、距離を取ろうとしてきたのに。
 
 二年後には離婚して自由にしてあげようと思っていたのに。
 
 こんなけなげな姿を見せられたら、もう手放せなくなってしまう。
 
 理性でコントロールできないくらい、彼女を好きになってしまう。
 
「……副社長。ちゃんと琴子さんと向き合ってください」
 
 岩木が静かな声で言う。
 
 どうすればいいのかわからなかった。
 
 ただただ胸が締めつけられた。








 ホームパーティーが終わり、スタッフたちの手で部屋が片付けられていく。
 
 琴子はキッチンに立ち、食洗器に入りきらない食器を手早く洗っていた。
 
 女性秘書に「奥様は座っていてください」と言われても、琴子は笑顔で首を横に振る。
 
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