離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
『でもちょっと露出が多くない? これじゃ、遊んでるって思われそう』

 スースーするのが落ち着かなくてスカートのすそを気にしながら言うと、ひとみは『わかってないなぁ』と人差し指を振った。

『その格好なら万が一知り合いに会っても琴子だってばれないでしょ? それに普段のおとなしそうな格好のほうが、簡単に言うことを聞きそうだと思われて危ないのよ。派手で気が強そうな子のほうが男は手を出しづらいの』
『そうなんだ』
『だからデート中は遊び慣れてて余裕のある女を演じなきゃだめだよ』
『遊び慣れてる女って?』

 いったいどんなふうにふるまえば余裕があるように見えるのか、見当もつかない。

『いつもの丁寧な言葉遣いはやめて、相手が年上でもため口でぐいぐい自分の意見を言ったほうがいいよ。わかった?』

 ひとみからの忠告を思い出し、今日は遊び慣れているふりをするんだ、と心の中で繰り返した。

 偽名を使い別人のように変装して男の人とデートするなんて、いけないことをしているみたいでドキドキする。

 すると握りしめていたスマホが震えた。

 画面を見ると、待ち合わせの相手からメッセージが届いていた。
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