離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 いったいなにを考えているんだ……。
 
 そう思いながら岩木を睨むと、彼は涼しい顔で笑っていた。
 
 どうせ俺を動揺させて楽しんでいるんだろう。
 
 悪趣味にもほどがある。
 
 俺も帰るとは言い出せず、琴子とともに玄関で岩木たちを見送る。
 
 扉が閉まりふたりきりになってから、はぁーっと息を吐き出した。
 
「悪い。俺はすぐに帰るから……」
 
 言いかけた俺の腕を、琴子が掴んだ。
 
「か、帰らないでください」
 
 真っ赤な顔でお願いされ、驚いて瞬きをする。
 
「琴子?」
「岩木さんも言っていたじゃないですか。忍さんの自宅はここだって」
「迷惑じゃないのか?」
「迷惑なわけ、ありません」
「でも……」
 
 彼女に引き留められて動揺する。
 
 琴子は俺と一緒にいることがいやじゃないのか? 
 愛してもいない夫と一晩同じ部屋で過ごすなんて、苦痛でしかないだろう。
 
 俺が眉を寄せると、琴子は焦ったように早口で理由を並べる。
 
< 134 / 179 >

この作品をシェア

pagetop