離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 驚いた琴子が飛び上がり、「すみません……っ」と真っ赤になる。
 
「いえいえ、仲が良くてうらやましいです」
「仕事一筋の副社長が突然結婚するなんてびっくりしていたんですが、本当に素敵な奥様で納得しました」
 
 スタッフたちにほめられた琴子は「そんなことは……」と視線を泳がせていた。
 
 動揺して照れた表情がかわいくて仕方ない。
 
「大体は片付きましたし、私たちはそろそろ失礼しましょうか」
 
 岩木の提案に「そうですね」とそれぞれ帰る支度をはじめる。
 
「じゃあ俺も……」と言いかけたとき、岩木があきれた表情でこちらを見た。
 
「なに言ってるんですか。副社長の自宅はここでしょう?」
 
 しらじらしい笑顔を浮かべそう言う。
 
 岩木の言葉に、スタッフたちも「そうですよ」とうなずいた。
 
 俺と琴子が別居していると知っているのは岩木だけだ。
 
 ほかの秘書たちは、俺たちが普通の夫婦だと思っている。
 
「いや、まぁ。それはそうだが……」
 
 わざわざ岩木以外に込み入った事情を話す必要はないが、かといってこのまま俺ひとりここに残されても困る。
 
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