離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
もうすでに到着して私を待っているらしい。
急がなきゃ。と慣れないヒールで歩調を速める。
向かう先は、家族でいつも利用しているホテルの一階にあるラウンジ。
誰もが知っている大きなホテルだから、待ち合わせに最適だと思ってこの場所を指定した。
詰襟の制服を着たドアマンが開いてくれた入り口からロビーに入ると、中にいる人の視線が私に集まった。
異質なものを見るような目を向けられ、はっとする。
ミニスカートにピンヒール。
露出度の高いこの格好は、高級感漂うこのホテルにふさわしくない。
しまった。
もっとよく考えて待ち合わせの場所を決めればよかった。
私が後悔していると、ロビーの奥にあるラウンジが騒がしいのに気が付いた。
どうやらふたりの男性がなにか言い争っているようだ。
茶髪にカジュアルな格好をした男の人と、スーツ姿の長身の男の人。
声を荒げ怒りをぶつける茶髪の彼に、スーツの男性は淡々とした表情でなにかを言い放つ。
もしかしたらあの茶髪の人が私の待ち合わせの相手かもしれない。
アプリにのっていた写真と似ている。