離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
「言えないです、そんなの。だって、私の両親も政略結婚だったけど、父は母を愛してなかったじゃないですか」
「ちがうわ、琴子ちゃん。旦那様は奥様のことを本当に愛してた」
「じゃあなんで、お父さんはお母さんを看取りもしなかったの……?」
 
 母は病室で『これでいいのよ』と微笑んでいたけど、さみしかったに決まってる。
 
 私がそう言うと、背後から静かな声がした。
 
「それは、静香が望んでいたからだ」
 
 振り向いて目を見開く。
 
 そこには父が立っていた。
 
 いつも多忙な父が、自宅にいるとは思わなかった。
 
 私は驚いて凍りつく。
 
「本当はすべてを捨てて、静香のそばにいたかった。けれど彼女がそれを許してくれなかった。あなたが選挙を投げ出すのは国民を裏切るのと一緒だと」
 
 病床の母が、選挙を報じるニュースを見てうれしそうな顔をしていたことを思い出す。
 
 母がお見舞いを拒んでいたなんて、知らなかった。
 
「お父さんは、本当にお母さんを愛していたの?」
 
 呆然としながら聞き返すと、千絵さんが丸い体をいからせてうなずいた。
 
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