離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
「あたり前じゃないですか。旦那様は死ぬほどモテるんですよ。それなのに奥様亡きあと、一度もよそ見をせず独身を貫いているのがその証拠です」
  
「そうだったんだ……」とつぶやく。
 
「お母さんはどうしてこんなに愛想がなくて無口なお父さんのために一生懸命尽くすのか、ずっと不思議に思ってた」
 
 私がそうつぶやくと、父は「それは……」とバツが悪そうに言葉をつまらせた。
 
「苦手なんだよ。言葉にするのが」
 
 ぶっきらぼうに言い、顔をそらしてしまう。
 
 不機嫌そうな横顔が、うっすらと赤く染まっていた。
 
「奥様はね、旦那様のあの照れたお顔が大好きだったんですよ」
 
 千絵さんが内緒話をするように教えてくれた。
 
「顔が?」
「奥様ったらものすごい面食いでね、政略結婚で出会った瞬間旦那様にひとめぼれして。この顔を近くで見られるだけで幸せだって、いつもにこにこしてたんですよ」
 
 まさか母が面食いだったとは。
 
 たしかに父は整った顔をしているけど。
 
「そんな天真爛漫な奥様を、旦那様も愛していた。もちろん琴子ちゃんも、愛されて生まれてきたんですよ」
 
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