離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 千絵さんの優しい声に、鼻の奥がつんと痛くなった。
 
 感情がたかぶって、瞳が潤む。
 
「本当に……?」
 
 父のほうを見ると、力強くうなずいてくれた。
 
「生まれてくるのが楽しみで、静香とふたりでいくつも名前を考えた。愛おしくてたまらないから『愛』と名づけようと決めていたんだ」
 
 愛という名前が候補だったのは母から教えてもらっていたけど、それがふたりで考えたものだなんて知らなかった。
 
「ただ、近い親戚に同じ名前の子供がいると知って、父が考えた『琴子』という名前になったんだが」
「私は愛されて生まれてきたの?」
「あたり前だろ」
 
 ためらいもせずそう言った父に、胸の辺りが熱くなる。
 
「お母さんが死んだときから、ずっと愛されてないんだと思ってきた。今回の政略結婚も、私は政治活動を優位に進めるための道具にされたのかなって……」
「そんなわけあるか! 琴子が幸せになるために、どれだけ厳選に厳選を重ねてきたと思ってる。今まで琴子に近づこうとした男を、徹底的に排除してきたんだぞ」
 
 私の言葉を聞いて、父が不満そうに声をあげた。
 
「排除って……」
 
< 149 / 179 >

この作品をシェア

pagetop