離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
「そんなこと、口だけなら誰だって言える。君は琴子に離婚を持ち掛けていたそうじゃないか。そんな男を信じられるわけがない」
「そう思われるのは当然です。ですが、私は琴子さんのためならなんだってします」
「なんだってだと?」
 
 父が不愉快そうに忍さんの言葉を繰り返す。
 
「私が、今持っている地位や財産をすべて捨てろと言ったらどうする」
 
 父の無理難題に、忍さんは少しもためらわずに口を開いた。
 
「琴子さんと一緒にいられるなら、仕事を辞め上條家と縁を切ってもかまわない」
 
 はっきりと言い切った忍さんに、父が眉をひそめた。
 
「そんな簡単にすべてを捨てるなんて。君には仕事に対する責任感というものがないのか」
「琴子さんに出会うまで、私は仕事以外のことに興味はありませんでした。恋愛なんて時間の無駄だと思っていたし、自分の結婚も仕事を優位に進めるための手段のひとつでしかなかった。でも、琴子さんに出会って変わりました。彼女のかわいらしさはもちろんまっすぐな人柄や優しさに惹かれ、一緒にいるだけで癒された。私にとってなにより大切な人です。そんな彼女を失ってまで、守るべきものなんてない」
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