離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
「君は本当に警戒心がなさすぎる」
 
 そう言いながら忍さんは私の腕を見る。
 
「……ここ、あいつに触られていたな。あとがのこってる」
 
 忍さんが私の腕を持ち上げ二の腕をそっとなでた。
 
 転びそうになったところを咄嗟に支えてくれたからか、腕にはうっすらと男性の指のあとがついていた。
 
「色が白いから少し目立つだけで、すぐに消えるから大丈夫だよ」
「それでも君の肌に、ほかの男のあとが残っているのは気に入らない」
 
 不愉快そうに言うと、忍さんはそのまま私の体を引き寄せた。
 
 そして私の背中に手を回し、ぎゅっと抱きしめる。体が密着し、心拍数が上がった。

 なにこの状況……!
 
「し、忍さん?」
 
 突然のことに驚いて視線を上げると、忍さんが私を見つめていた。
 
 距離の近さに思わず息をのむ。

 恋愛経験のない私はパニックだ。
 洋服越しでもわかるたくましい体に、頭に血が上る。
 
「あ、あのっ……!」
 
 どうして抱きしめられているんだろう!
 
「すごい心臓の音だな」
 
 私を腕の中に抱きしめたまま忍さんが喉の奥で笑う。 
 
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