離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 密着しているせいで、ドキドキしているのが伝わってしまう。
 
「こんな公共の場で抱きしめられたら、誰だって恥ずかしくて動揺するからっ」
 
 ほかにも手をつないだり腕を組んだりするカップルはいたけれど、私たちみたいに抱き合う人はいない。
 
 通り過ぎた女の子たちがこちらを見ながら「いいなぁ。ラブラブだ」なんて言い合っているのが聞こえて、さらに体温が上がる。
 
「し、忍さんっ。人が見てるから離して」
「じゃあ、人に見られない場所でなら抱きしめていいのか?」
「そんなの、余計にだめだよ! ふたりきりのときに抱きしめられたら、心臓が爆発する……っ!」
 
 泣きそうになりながら言うと、腕に力をこめ大きくため息をついた。
  
 胸が苦しいのに心地よくて、どうしていいのかわからなくなる。
 
 私がじたばたもがいていると、忍さんはゆっくりと腕をゆるめてくれた。
 
 こちらをみつめ、目元だけで微笑む。その色っぽさに、体の奥がぞくっと震えた。
 
「じゃあ、手をつなごう」
 
 忍さんは私の手を取った。指を絡められ、恋人つなぎだ……!と心の中で叫ぶ。
 
「な、なんで手をっ!?」
 
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