離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
「実際に会うまでは、もっと打算的で身勝手な女だろうと思っていた」
 
 忍さんの言葉に首をかしげる。
 
 彼とはマッチングアプリを通して数回メッセージを交わしただけのはずだ。
 
 一日楽しく遊べる相手をと募集しただけで、そんなわがままを言った覚えはないけれど。
 
「私、アプリでなにか失礼なメッセージを送ったっけ……」
 
 彼とのやりとりを思い出そうとしていると、忍さんが静かに首を横に振る。

「いや。メッセージじゃなく、俺が勝手に決めつけていただけだ。きっと、俺みたいに自分本位で相手の気持ちを考えられない女性なんだろうなって」
「忍さんは自分本位なんかじゃないよ」
 
 私がそう言うと、彼は驚いたようにこちらを見た。
 
「まだ出会って数時間だけど、忍さんがいい人だってちゃんとわかってるよ」
「いい人って。君は俺のことをなにも知らないだろ。そんなふうに簡単に人を信用しないほうがいい」
「でも忍さんはすごく優しくしてくれるし……」
 
 車の中でもカフェでも、忍さんは私の気持ちを優先してくれた。
 
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