離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 淡い光に照らされた横顔は精悍でかっこよくて、胸の辺りがきゅんと苦しくなる。
 
 こんな気持ちははじめてだった。
 
 すると、水槽を見ていた忍さんが不意に表情をゆるめた。
 
「これ、似てるな」
 
 なんだろうと私も水槽をのぞきこむ。

 そこには奇妙なかたちをした小さなタコがいた。
 
「メンダコ?」
 
 水槽の横にある説明書きを読む。
 
 どうやら深海に住むタコらしい。
 
 タコなのに長い足はなく、小さな子供がシーツをかぶってお化けの仮装をしているようなまぬけなフォルムだった。
 
 頭の上で耳のようなひれがぴょこぴょこ動いていて、どこか愛嬌がある。
 
「似てるって、なにに?」
 
 そうたずねると「君に」と言われた。
 
「え、私?」
 
 この変な生物に似てる?と驚き目を丸くする。
 
「ほら、そうやって黒めがちな目でじっと見つめてくる感じとか、ぴょこぴょこ一生懸命ひれを動かしているところとか、かわいくて似てる」
 
 女性として見られるどころか、人間扱いもされてない。
 
 ちょっと悔しくて頬をふくらませる。
 
「それに、そうやってすぐ頬を赤くするところも」
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