離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
「ひどい」
「かわいいとほめているんだが」
「そんな微妙なほめかたうれしくないよ。忍さん、女心をわかってなさすぎ」
 
 むきになる私を、忍さんはくすくす笑いながら見つめる。
 
 その視線が甘くて体の奥が熱くなる。
 
「怒ってるのか?」
「ものすごく」
 
 すねる私の機嫌をとるように、忍さんがこちらをのぞきこんだ。
 
「じゃあ、どうしたら機嫌を直してくれる?」
 
 耳元で低くささやかれ、それだけで腰がくだけてしまうかと思った。
 
 本当にこの人は、ずるいくらいかっこいい。

 女心をわかってないなんて言ったけど、忍さんは相当モテると思う。
 
 だってこんな魅力的な人を、女性が放っておくわけがない。
 
 心臓がきゅうっと苦しくなった。
 
 こんな痛みを感じるのははじめてだけど、鈍感な私でもわかった。
 
 これは、恋の痛みだ。
 
 どうしよう。
 私、忍さんのことが好きだ。
 
 今日はじめて出会って数時間一緒に過ごしただけなのに、どうしようもないくらいこの人に惹かれてる。
 
 私は父が決めた相手と政略結婚をするのに。
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