離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 さらりと言われ、驚いて顔を上げる。
 
「そんなことって、キスだよ?」
「キスくらい、いくらでも」
 
 彼は笑うと、私の後頭部を手で包み自分のほうへ引き寄せた。
 
 彼の体が近づき目をつぶると、額に柔らかな感触が落ちてきた。

 おでこにキスをされたんだと気づき、「違う!」と頬をふくらませる。

「おでこじゃなくて!」
 
 こっちは勇気を振り絞って言ったのに、完全に子ども扱いされてる!
 
「じゃあ、ここか?」
 
 今度は私のこめかみにキスをする。
 
 ちゅっという音とともに触れる温度に、心臓が跳ねた。
 
「そこでもなくて……っ」
「わがままだな」
 
 くすくすと笑う声と一緒に、頬にまぶたに耳に首筋に、たくさんのキスをされる。
 
「んん……っ」
 
 そのたびに肌がぞくっと震えて、体の芯がとろけてしまいそうになる。
 
 どうしよう。

 気持ちよくて立っていられない。
 
 膝に力が入らなくなると、忍さんが私の腰に腕を回し体を支えてくれた。
 
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