離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 楽しそうに声を上げて笑う。
 
「な、なんで笑うの?」
 
 口を開けてって言うから開けたのに。
 
 真っ赤になって慌てていると、忍さんは機嫌よさそうに目元をゆるめる。
 
「本当に、君はいちいちかわいくてたまらないな」
 
 そうつぶやくと同時に、唇をふさがれた。
 
 身構える暇もなく、柔らかな舌が唇を割って口内に入ってきた。
 
 驚いて身を引こうとすると、逃がさないというように彼の唇が追ってくる。
 
「んん……っ」
 
 呼吸をしようと唇を開くと容赦なく舌をからめとられた。
 
 体の奥がぞくぞくとうずいて膝が震える。
 
 腰を抱き寄せられ、後頭部を支えられ、容赦のない濃厚なキスをされた。
 
 ひと気のない水族館の片隅でした生まれてはじめてのキスは、私が予想していたより何万倍も気持ちよくて、理性が溶かされていく。
 
 キスをしながら忍さんは私の髪を優しくなでてくれた。
 
 長い指の間を私の黒髪が流れていく。
 
 その感触まで快感につながり頭がぼうっとしてしまう。
 
 もっともっとキスをしてほしい。
 
 このまま時間が止まってしまえばいいのに。
 
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