男装獣師と妖獣ノエル ~騎士団で紅一点!? 幼馴染の副団長が過保護です~
「明日は、一人で町を見て来てもいい? 少し調べたい事もあるし、村の外の町って初めてなんだもん。獣師としての調査だから、遊びとかじゃないよ。一人の方が気も楽だし、いいよね?」

 セドリックは、彼女の一人称が『オレ』でなかった時代を彷彿とさせる素直な口調と、期待に輝く大きな瞳を見て、ダメとは言えない空気に言葉を詰まらせた。

 彼の沈黙を肯定と受け取ったラビは、続いてユリシスへと好奇心の強い瞳を向けて、「ん」と右手を差し出した。

「被害者が足を運んだ場所とか、記録は残ってた?」
「――え。ああ、はい」

 ユリシスは、数秒遅れでメモ用紙を取り出した。実際の調査資料を見せる訳にはいかないので、要点だけ書き写したものだと説明し、彼は神妙な顔でそれを手渡した。

 ラビはメモ用紙をポケットにしまいながら、ノエルにそれとなく目配せした。今日大きく動かないのであれば、ちょっと寄り道したい事があったのだ。

 すぐに内容を察したノエルが、『いいんじゃねぇの』と言った。

『せっかくの機会だ、見せてもらおうぜ。俺もゆっくりしたいし』

 改めて男達へ視線を戻したラビは、彼らが僅かに身構える様子にも気付かず、「地図とかってどこに置かれているんだ?」と尋ねて、それをすぐに見たいと要求した。
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