男装獣師と妖獣ノエル ~騎士団で紅一点!? 幼馴染の副団長が過保護です~
 ラビは、よく分からなくて、ひとまず呑気な幼馴染を睨みつけた。

「礼はオレじゃなくて、ビアンカに言ってやれよ。夫人が寂しがらないように、いつもそばにいてくれているんだから」

 伯爵夫人は、以前は身体が弱かったために療養していたようだが、今では体調に問題はない。彼女をホノワ村に引きとめている本当の理由は分からないが、ラビとしては、夫や息子達を想ってスコーンを焼き、好きよと伝えるように優しく抱きしめてくれる彼女は、家族と一緒に、穏やかに暮らす姿が一番合っていると思っていた。

 ビアンカも、ラビも、血の繋がった家族がいないからこそ、それを強く確信しているのだ。

 ラビの言葉を聞いたセドリックは、数秒ほどきょとんとしていた。彼は、兄が母に送った猫を思い浮かべ、それから柔らかく微笑んで「そうですね、ビアンカにも伝えたいと思います」と言い、そっと手を離した。
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