あの夏の日の午後のこと、私はきっと忘れないだろう

あの人のサンダルしかない三和土を見渡しながら、私は緊張のせいで溜まった生唾をごくん、と飲み下した。


この先は、2人っきり。


男の人の家に上がって、2人きりになることの意味は……もう知っている。



ずっとずっと、いけない、と。

隠さなきゃいけない、と、懸命に押し殺してきた気持ちだけど。


今のあの人は、独身の……男性で。

私だって、もう大人だ。



1度だけ、大きく深呼吸をして。


立ち上がった時にはもう、私の心は決まっていた。



あの人以外を、好きになれないのなら。

もう、あの人を好きな自分を受け入れよう。


そして、できることならば……あの人にも私を、私の気持ちを受け入れてもらいたい。
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